感染症対策の基礎知識
介護現場における感染症対策とリスク管理は、利用者と職員の健康を守る上で極めて重要である。厚生労働省が示す「介護現場における感染対策の手引き」によると、介護施設では標準予防策(スタンダードプリコーション)を基本とした感染対策の実施が求められている。標準予防策とは、感染症の有無に関わらず、すべての利用者に対して一律に実施する感染予防策であり、血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷のある皮膚、粘膜などを感染の可能性があるものとして取り扱う考え方だ。この基本原則を理解し、日常業務において徹底することが感染拡大防止の要となる。
手指衛生と個人防護具(PPE)の適切な使用が感染対策の中核を成している。手指衛生は、石鹸と流水による手洗いまたはアルコール系手指消毒剤による消毒を、利用者との接触前後、汚染の可能性がある物品に触れた後、個人防護具を外した後などのタイミングで実施する必要がある。手のひらだけでなく、指間、指先、手首まで丁寧に洗浄することが重要だ。マスク、手袋、エプロンなどの個人防護具は、ケアの内容に応じて適切に選択し、正しい装着・脱着手順を遵守しなければならない。また、施設内の環境整備として、利用者が頻繁に触れる箇所の定期的な清拭・消毒も不可欠だ。
利用者の健康状態の継続的な観察と早期対応も重要な要素である。発熱、咳、下痢などの症状を呈する利用者を早期に発見し、適切な隔離措置を講じることで集団感染を防ぐことができる。介護職員自身の健康管理も感染対策の一環であり、体調不良時の出勤停止、定期的な健康チェック、予防接種の実施などが求められる。これらの総合的な対策を組織的に実施することで、安全で質の高い介護サービスの提供が可能となるのだ。