安全な薬剤管理と服薬ミス防止

薬剤管理と服薬事故防止は介護現場における最重要課題の一つである。厚生労働省の調査によると、介護施設等で発生する事故の中でも誤薬・与薬漏れは頻発しており、利用者の健康に直接的な影響を与える可能性が高い。薬剤管理における基本原則として「6つのR」が挙げられる。これは「正しい患者（Right Patient）」「正しい薬剤（Right Drug）」「正しい用量（Right Dose）」「正しい時間（Right Time）」「正しい経路（Right Route）」「正しい記録（Right Record）」を指し、服薬介助時には必ずこの6項目を確認する必要がある。薬剤の適切な保管も重要であり、湿度、温度、光などの環境要因に配慮し、特に冷蔵保存が必要な薬剤については温度管理を徹底しなければならない。

服薬時の確認作業とダブルチェック体制の構築が事故防止の核となる。服薬介助前には利用者の氏名、薬剤名、用量、服薬時間を声に出して確認し、可能な限り複数の職員によるダブルチェックを実施することが推奨されている。服薬カレンダーや与薬チェックシートを活用し、誰がいつ何の薬剤を服用したかを正確に記録することで、重複投与や与薬漏れを防ぐことができる。服薬後は利用者が確実に薬剤を飲み込んだことを確認し、口腔内に残薬がないかチェックすることも重要だ。シフト制勤務においては、薬剤変更や特記事項の申し送りを確実に行い、情報共有の漏れがないよう徹底する必要がある。

万が一誤薬が発生した場合の対応体制も整備しておかなければならない。誤薬を発見した際は直ちに上司や看護師に報告し、必要に応じて医師への連絡や医療機関への受診を検討する必要がある。事故報告書の作成と原因分析を行い、再発防止策を講じることが求められる。介護士自身の健康管理も薬剤管理の質に影響するため、十分な休息と集中力の維持を心がけることが重要である。これらの総合的な対策により、安全で確実な薬剤管理体制を構築することが可能となる。