誤嚥窒息を予防するには
誤嚥・窒息は介護現場で最も警戒すべき事故の一つである。厚生労働省の人口動態統計によると、誤嚥性肺炎は日本人の死因の上位を占めており、高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎とされている。食べ物や飲み物が誤って気管に入ることで起こる誤嚥は、嚥下機能が低下した高齢者にとって生命に関わる深刻なリスクとなる。食物の大きさや形状によっては気管が閉塞し、窒息に至る危険性もあるため、介護現場では体系的な予防対策が不可欠だ。
食事場面での適切な環境整備と姿勢管理が重要である。利用者にはリラックスした状態で、背筋を伸ばして座ってもらい、頭部をわずかに前傾させることで食物が食道に流れやすくなる。一口量を小さくし、十分な咀嚼を促すことで誤嚥リスクを軽減できるだろう。食材の調理法にも配慮が必要で、硬いものや大きすぎるもの、粘性の高い食品は誤嚥の原因となりやすい。食材を細かく刻んだり、軟らかく調理したりして飲み込みやすい形態に調整することが求められる。また、とろみ剤を使用した飲み物は、液体の流速を調整し誤嚥防止に効果的である。
食事中の環境管理と異常の早期発見も重要な要素だ。食事中の会話や笑いは誤嚥を誘発する要因となるため、飲み込みが完了してから会話を楽しむよう指導する必要がある。食後は十分な休息時間を設け、喉の状態を安定させることも事故防止に繋がる。介護職員は日常的に利用者の嚥下状態を観察し、むせや異常音が聞かれた際は即座に食事を中断し、必要に応じて医療機関との連携を図ることが重要である。これらの総合的な対策により、誤嚥・窒息事故のリスクを大幅に軽減することが可能となる。